介護老人保健施設認知症棟における転倒予防マネジメント構築のための研究―入所者の認知症の行動・心理症状と転倒の関係

A study for construction of a management system to prevent falls in the dementia ward of intermediate welfare facility：relationship between behavioral and psychological symptoms of dementia of residents who have experienced falls.

要旨：〔目的〕介護老人保健施設認知症棟における転倒予防マネジメントを構築するための知見を得ることである．そこで，認知症棟入所者の転倒予測のために有益な指標を検討した．〔方法〕過去1年間の転倒状況から，対象者を転倒群と非転倒群とに分類して，認知症棟入所者の基本属性，職員の認知症の行動・心理症状の発見状況について調査し，比較，検討した．〔結果〕認知症の行動・心理症状の一つである暴力行為においてのみ，群間に有意差が認められた．また，転倒数の多い入所者は暴力行為も多いことが明らかとなった．〔結語〕これまで報告されることが少なかったが，転倒に帰結する可能性の高い具体的な指標として暴力行為を指摘することができ，目的に合致する結果が得られた．今回の結果をもとに，暴力行為を行った入所者の転倒の発生機序を明確にすることで，介護老人保健施設認知症棟における転倒予防マネジメントの構築に寄与できる可能性が示唆された．