巻頭言
大学と教育とリハビリテーション医
加賀谷 斉
1
1藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座
pp.113
発行日 2008年2月10日
Published Date 2008/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101172
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2年程前に一般病院から大学に8年半ぶりに戻ってきて驚いたことがある.学生に対する教育の充実ぶりである.私立大学だからであろうかと一瞬思ったが,以前在籍した大学の同輩に聞いても,旧国立大でも似たような状況であるらしい.10年以上前になるが,学会で工学者の友人に大学では何が大変かを尋ねたところ,学生教育という答えがすぐに返ってきた.医学部では臨床がある代わりに教育の負担は軽いと思った記憶があるが,現在は医学部も他学部並に教育重視になったようだ.これ自体は悪いことではないが,医学部では覚えるべきことが膨大であり,6年間ひたすら詰め込まれる学生も気の毒になってくる.大学というより医学専門学校のようである.医師は自分で考えることができなければ仕事にならない.病態,検査法,治療法,予後や帰結などを常に考え,最新の知識を吸収したり,指導医に尋ねたり,能動的に行動する必要がある.今までのように,机に向かっているだけで丁寧に教えてくれる教師など存在しない.6年間受動的に知識を詰め込まれることに慣れた新人医師が,自分でどれだけ能動的に考えることが可能であろうかと心配になる.新人医師には自ら考えて能動的に学習する習慣をぜひ身につけて欲しい.
他にも適切な態度や協調性など,身につけておいて欲しいことは数多いが,正しい論文の書き方もその一つである.論文の査読をしていると,論理や構成が目茶苦茶な論文によく遭遇する.論文の書き方には一定のマナーがあり,そこから著しく逸脱している論文を読まされると,いくらよい研究であっても吐き気と怒りが生じてくる.ぜひ,若いうちに正しい論文の書き方を学んで欲しいと願っている.
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