Japanese
English
特集 脳外傷などによる高次脳機能障害の課題
診断方法の進歩と課題
Recent advance in the diagnosis of traumatic brain injuries.
丸石 正治
1
Masaharu Maruishi
1
1広島県高次脳機能センター
1Hiroshima Higher Brain Function Center
キーワード:
脳外傷
,
MRI
,
社会性認知
Keyword:
脳外傷
,
MRI
,
社会性認知
pp.865-869
発行日 2007年9月10日
Published Date 2007/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101035
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はじめに
近年の交通事故発生状況から分析すると,交通事故の発生数が増加する一方で,死亡者数は大幅に減少している.現在,米国では人口の2%,530万人が何らかの外傷性脳損傷の後遺症をもって生活していると言われており1),いまや外傷性脳損傷診療における最重要課題は,高次脳機能障害を中心とした後遺症対策と言っても過言ではない.厚生労働省の実態調査では,高次脳機能障害者の76%が脳外傷によるもので,その神経症候は,注意障害,記憶障害,遂行機能障害,社会的行動障害が主な症状であった2).
一方,近年の脳科学研究において,いわゆる認知機能には,実行系認知(executive cognition)と社会性認知(social cognition)に区別されることが明らかになった3)(表1).実行系認知とは,いわゆるワークングメモリに代表される機能で,これまで脳外傷の認知機能低下の主因として取り上げられてきた.一方,社会性認知とは,自閉症やアスペルガー症候群でその低下が指摘されており,丸石4)は,脳外傷者の機能画像研究から,脳外傷における認知障害の根本的問題は,この社会性認知の機能低下であると報告した.
本稿では,最近の診断評価に関する知見を紹介し,とくにこの社会性認知機能低下に関連するエビデンスを取り上げる.
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