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はじめに
車いすや電動車いすは,厚生労働省が定める補装具の交付基準1)において代表的な種目であり,身体障害児・者の生活を支えるために有効な移動機器として活用されている.ここ10年,とくに重度の障害児・者の身体状況に適合させるためにティルト式の車いすや電動車いすが工夫され,多くの社会参加の場が提供されるようになった.また,就労や生活の質を高めるうえで工夫された6輪型車いすやスタンドアップ車いすなども用いられるようになった.
これらは,交付基準の種目に定められていない補装具であるが,臨床の現場では,有効なものとして日常的に処方・製作されるものも多くなった.補装具の処方と製作は,医師やセラピスト,ソーシャルワーカーなどのチームで検討されるが,最終判断は医師の判定により行い,使用者の障害の状況と使用目的に適合される.その際,製作費用の面で公的な援助(本号別項「障害者自立支援法による補装具費の支給」参照)が得られるが,そのような交付基準にない車いすや電動車いすは,2006年10月の障害者自立支援法実施以前は基準外補装具,実施後は特例補装具として,各自治体において,申請されるごとに審議会などを設けて協議され,承認された場合に製作費用面で公的援助が行われてきた.
障害者自立支援法の開始により,それ以前では所得税額による算定で自己負担金がなかった使用者であっても,厚生労働省が定める各補装具の購入費用の1割を使用者が負担することになった.そのため,特例補装具として協議される補装具は,現在の購入基準に定められているものよりも高額な場合が多いため,承認されない場合は,全額自己負担か,一番類似している基準内補装具を適用したとしても,1割負担に加えて,基準金額を超えた金額を負担しなければならない.
今後,使用者や家族の経済的負担を少しでも軽減するためには,臨床で多く活用されているものであれば特例補装具として申請されてきたものでも基準内補装具に含めることができるようになることが期待されている.
本稿では,とくにティルト式車いすの有効性を中心に解説し,その他の特徴のある車いすにも触れる.
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