Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「スパイダー 少年は蜘蛛にキスをする」―現実と妄想の狭間で揺れる母の面影
二通 諭
1
1千歳市立北進中学校
pp.795
発行日 2003年8月10日
Published Date 2003/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100878
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「スパイダー 少年は蜘蛛にキスをする」(監督/デイヴィッド・クローネンバーグ)は統合失調症を患った男の記憶あるいは妄想の世界を描いたものである.どれが正しい記憶でどれが正しくない記憶,つまりは妄想なのかについてはさだかではない,というところに物語の核心がある.ともかくも提示されるのはその男デニス(レイフ・ファインズ)の少年時代の記憶であり,観客としては勢い次々繰り出される記憶の断片を組み合わせて事実を再構築していくという,いわば謎解きのノリで付き合うことになる.
開巻一番ヨレヨレのコートに身を包んだデニスがロンドンのとある駅に降り立つ.メモを頼りに歩いて行くその先はウィルキンソン夫人の家.ここは社会と病院の中間に位置するケア付きアパートとでも言うべき社会復帰施設だ.精神科の病棟を出たばかりのデニスが新しい生活をスタートさせる場なのだ.
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