随想 明日を担う公衆衛生
農民に学ぶ
角田 文男
1
1福島県立医大公衆衛生学教室
pp.432-433
発行日 1966年8月15日
Published Date 1966/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203307
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1つの麦わら帽子が壁にかけられたまま,冬を越して2年目の夏を迎えようとしている。この帽子とともに昨年の夏,隔離集団の調査で山間僻地に点在する部落を訪れて,言い習わされた"東北の農村"の典型をみてきた。私は,この素朴な美しさを持つ麦わら帽子をみつめながら,この1年間「泥沼の農村衛生とか,救いようのない貧困と不衛生に苦悩する農村保健」と抽象される,あの現実に対して公衆衛生はどのように対処すべきなのだろうかと自問自答してきた。
答えはいつも「それは農民に学ぶことだ」ときまって繰り返された。この言葉の背景には,心に刻み込まれるような強烈な経験があるからである。
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