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はじめに
わが国の障害者総数は約576万人(身体318万人,知的41万人,精神217万人)とされ,65歳以上が54.1%と過半数を占める(平成12年版厚生白書).そこで今回は,高齢者・高齢障害者の地域リハビリテーションに焦点をあてて論じていく.
高齢者をめぐる地域リハビリテーション活動が全国展開されて20年以上経過した.老人保健法以前の1960年代に,東京リハビリテーション福祉協会などの先駆的活動はすでに始まっており,1970年代に入って,兵庫県総合リハビリテーションセンターや大阪大東市,国立療養所長崎病院を中心に理論化された.大切なことは,こうした活動が障害者・家族の要求,努力を中心にすえて取り組まれてきたことで,今日の高齢者地域リハビリテーション推進事業はその一面を反映して立ち上がってきたと言ってもよい.医療と地域リハビリテーションをめぐる動向を表1に示した.
1983年の老人保健法の土台にもなっている林構想「今後の医療政策―視点と方向」に注目すると,その後の医療政策の流れを予測できる.急激な高齢化に伴う慢性疾患の増加と医療費増のテンポが急で国庫負担が追いつかない,したがって健康に関しては自己責任と自己負担の増,相互扶助という原則が貫かれている.
この原則は1987年の厚生省国民医療総合対策本部「中間報告」,今日の社会福祉基礎構造改革の方向にも展開されている.その理由を1990年代に発表された第二次臨時行政改革推進審議会答申,日経連報告は次のように指摘している.「競争できる活力のある社会を維持しつつ高齢化社会に対応するためには,国民負担率(ヨーロッパで軒並み50%以上,日本では30%台後半)を高齢ピークの2020年においても40%台半ばに抑えねばならない」.そのために医療費抑制,社会福祉構造改革が必要なのである1).
老人保健法は同時に,地域リハビリテーションのきっかけにもなった機能訓練事業・訪問指導事業をセットに全国展開させる.平成元年の「寝たきりゼロをめざして」では,常に寝たきり(Bed-bound),ベッド上で体を起こせる(Chair-bound),屋内歩行可(House-bound),日常生活支障なし,という分類を用い,65歳以上の在宅者でHouse-boundはわが国4.1%,英国8%,デンマーク6.3%だが,常に寝たきりBed-boundはそれぞれ0.6,0.2,0.1と数倍に及び,特養ホームなど施設では10倍以上と指摘した2).その後この課題は維持期リハビリテーションのあり方検討委員会に引き継がれ,地域リハビリテーション推進事業として結実してきたのである.
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