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はじめに
リハビリテーションは,理学療法,作業療法,言語療法に代表されるような機能回復訓練という狭義の医療の定義から,「人間性の回復」,「社会参加の獲得」に至るための,治療,代償能力の開発,環境改善の工夫,心理的・社会的サポートなど,社会統合を目標にさまざまなチームの専門技能を有機的に組み合わせる広義の活動までを包含している.
地域リハビリテーションについては,「障害のある人々や高齢者およびその家族が住み慣れたところで,そこに住む人々とともに,一生安全に,いきいきとした生活が送れるよう,医療や保健,福祉および生活に関わるあらゆる人々や機関・組織がリハビリテーションの立場から協力し合って行う活動のすべてを言う.」(2001年,日本リハビリテーション病院・施設協会)と定義されている.このように地域リハビリテーションは,行政・保健・福祉・地域住民などが有機的に関係しながら障害者や高齢者の「ノーマライゼーション」という目標に向かって継続的に実践するためのシステムである.
2000年度の介護保険制度の導入,2003年4月からの社会福祉事業法の一部改正による身体障害者福祉法等の「措置制度」から「支援費制度」への移行によって,行政主体が県から市町村へ委譲され,障害者のニーズに対応したきめ細やかなサービス提供体制づくりが進んでいる.しかし現時点では,その対応において地域格差は明らかである.
地域リハビリテーションの拠点となる病院・施設におけるリハビリテーション内容も同様で,介護保険施行後は一層地域格差が著しくなっている.そこで,国は解決策として2000年に「地域リハビリテーション推進事業」を策定し,全国都道府県において現在進行中である.
医療機関におけるリハビリテーション医療では,障害者および障害をもつ高齢者を対象に,急性期・回復期リハビリテーションから,維持期リハビリテーションまでを受けもっているが,介護保険施行後は地域・在宅リハビリテーションにも積極的に関わらざるを得なくなってきている.リハビリテーション回復期病棟の設置や介護保険による地域ケア,介護メニューの拡大などは,調整次第で医療機関による在宅サービスをやりやすくさせたのではないだろうか.厚生労働白書によると,介護サービスの利用について地方自治体の行ったアンケートでも,「満足」,「ほぼ満足」が約86%を占め,その効果は在宅生活,家族負担の軽減,QOL(quality of life)の向上などに現れている.これまで障害者や高齢者が意思に反して社会的入院や長期施設入所などを余儀なくさせられた状態からみれば,明らかに改善の方向に向かっているのではないだろうか.このようななかで,地域リハビリテーションに関わる医療機関の在宅支援の役割は重要になってきている.
本稿では,地域リハビリテーション支援センターの立場から,地域リハビリテーションにおける医療機関の役割と現状を報告する.
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