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はじめに
「かかった費用に見合う価値(value for money)」や「費用対効果(cost effectiveness)」が問われるようになってきた.その背景には,医療費抑制への圧力や政策選択の根拠を示す「評価と説明責任」への要求の高まりがある.お金や人手,時間などの「費用(cost)」あるいは「資源(resource)」を好きなだけ使える状況ならこれらは問われない.しかし,今後は「限られた費用・資源」で「最大限の効果」をあげることがますます求められるであろう.言い換えれば「効率」が問われる時代である.
治療方法など選択肢が複数ある場合に,どの方法の「効率」が高いのか見極める経済評価手法が開発されてきた.費用便益分析,費用効果分析,費用効用分析などと呼ばれる手法である.これらの開発には,医学・公衆衛生学・心理学・経済学・政策評価・政策科学などさまざまな分野の研究者が関わってきたため,その用語や概念が必ずしも統一されておらず分かりにくい.しかし,今後は,医療に関わる者にも,効果とともにその費用や効率などについても「評価と説明責任」が求められる時代に向かうであろう.そのことを考えれば,経済評価の基本を理解することは避けては通れない.
例えば,「狭義の経済評価」では,便益と効果,効用の3つの概念が区別され,これら全体を指す言葉としてアウトカム(outcome)という言葉が用いられる.この言葉は,訳書では,成果・結果・帰結などと訳されるが,この訳語に3つの概念が含まれることを知らなければ混乱するであろう.(小論では混乱を避けるため「アウトカム」とカタカナで表記することにする.)そこで,医療従事者が知っておくべき経済評価の基本概念と手法を概説する.そして経済評価の問題点や制約についても考察を加える.
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