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はじめに
私は1947年生まれの「団塊の世代」で,医学生運動を通して社会科学の面白さに目覚め,1972年に医学部を卒業してから13年間,リハビリテーション(以下,リハ)科医と医療問題(特に医療経済学)の勉強・研究の「二本立」生活を続けた.具体的には,東京都心の地域病院(代々木病院)で脳卒中患者の早期リハに携わるとともに,上田敏先生と故川上武先生の指導を受けながら,次の2つの研究に取り組んだ.1つは脳卒中リハ患者の最終自立度の早期予測および脳卒中患者の障害の構造の研究(臨床医学研究),もう1つは脳卒中医療・リハの体系化の研究(社会医学研究)である.これらは一見まったく別種の研究に見えるかもしれないが,「脳卒中リハを科学的,効果的,効率的に進めるための研究」という点で共通していた1).これらを行う上では,限られた資源の有効利用という(近代)経済学の基本命題・視点が非常に役立った2).
その後,1985年に,医療の現実と医療技術の特性を踏まえた医療経済学の確立・研究を志して,日本福祉大学教授に転身した.ただし,2004年まで19年間,大学教授と臨床医(代々木病院での非常勤診療:リハ診療と往診)の「二本立」生活を続けた.日本福祉大学勤務中は,政策的意味合いが明確な医療経済学的実証研究と医療・介護の政策研究との「二本立」研究を継続した3).2005年には,両者の統合を意味する「医療経済・政策学」(「政策的意味合いが明確な医療経済学的研究と,経済分析に裏打ちされた医療政策研究との統合・融合をめざし」た学問)概念を提唱した(『講座*医療経済・政策学』勁草書房).日本福祉大学には28年間勤務し,2013年3月に65歳で定年退職したが,同年4月から学長に就任した.学長就任後も,学長業務と政策研究との「二本立」生活を継続している.
本稿では,過去40年間の私の医療経済・政策学研究を振り返りつつ,最新の研究動向も紹介しながら,リハ科医・専門職に必要な,医療経済・政策学の視点と基礎知識について,5つの柱立てで述べる.
Abstract : Based on my 40-years of experience as a physiatrist and health economist, I present several health economics and policy perspectives along with some basic knowledge requisite for rehabilitation professionals as follows : (1)There are two economic theories or schools concerning the role of health care in society. (2)It is crucial to correctly understand the concept of “efficiency” ; efficiency in itself does not necessarily mean health care cost containment. (3)There are several basic methods to measure health efficiency ; the most practical one is cost-effectiveness analysis (CEA). (4)The cost of community-based long-term care is not necessarily cheaper than institutional care. (5)We must differentiate “long-term perspective” from “short-term perspective” when we evaluate the efficiency of health care and rehabilitation services.
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