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はじめに
基本動作に対する治療目標は,より高度な運動パターンを獲得することである.また,この目標は中枢神経疾患における治療概念の一つに挙げられる.加齢および中枢神経障害により発達の退行化が起こり,起き上がり動作も他の基本動作と同様に,運動パターンの低齢化,あるいは運動パターンの固定化が生じる.一方,健常者では,同一の課題に対していくつかの運動パターンを用いて可能であり,起き上がり動作でも多くのバリエーションが観察される.ベッド上で観察される代表的なものは,上半身を起こした後,下肢をベッドから下ろす,あるいは下肢を下ろした後,上半身を起こす運動パターンである.
起き上がり動作は日常生活動作のうち最も基本的な動作であり,脳卒中患者では,この動作を獲得することが,その後のADL(activities of daily living)を獲得するうえできわめて重要となる.脳卒中患者では,一側あるいは両側の運動麻痺を有するため,通常,一側(非麻痺側)へ一度寝返りした後,上肢の支持により,上半身を起こすよう指導される.
現在までに,起き上がり動作における運動パターンについて,その特徴を分類化する試みがなされている1).小児における運動発達で,観察される運動パターンには一定の出現順序があり,発達年齢が上がるとともに,より高度な運動パターンが獲得される.この過程は,中枢神経疾患による運動障害者に対する運動療法に応用されている.
運動パターンに関する研究として,エネルギー効率や筋活動について分析したもの2-4),施設利用者と地域在住者との比較で同年代の高齢者ついて比較検討したものがある7-9).しかし,運動パターンについて,年代の相違に着目した報告は少ない5,6).また,動作の定性的側面と定量的側面の2つの側面から分析した報告は少ない10).
そこで本研究は,年齢や性差によって起き上がり動作における運動パターンや所要時間がどのように変化するかという点について明らかにすることを目的とした.
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