Japanese
English
講座 PTSD;外傷後ストレス障害 5
三次救急医療における心的外傷とその対応
Treatment methods for psychological and holistic trauma in critical care medicine.
中村 俊規
1
Toshinori Nakamura
1
1東京医科歯科大学難病疾患研究所被害行動学(損保)研究部門
1Medical Research Institute, Tokyo Medical and Dental University
キーワード:
心的外傷
,
救命救急医療
,
ナラティブ・カウンセリング
,
社会復帰
Keyword:
心的外傷
,
救命救急医療
,
ナラティブ・カウンセリング
,
社会復帰
pp.435-441
発行日 2004年5月10日
Published Date 2004/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100578
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はじめに
21世紀にはいって,心的外傷後ストレス障害posttraumatic stress disorder(PTSD),あるいはトラウマという言葉が,医療の現場以外のわれわれの日常生活の用語としてもしばしば使われるようになった.この問題は,特徴的な生理基盤や症候群の認識とともに今日の精神医学におけるトピックスとして再発見され,Janet P(1859-1947)の発想に回帰したもの(心的外傷論)がその根底にある.テロや虐待あるいは被災の問題が実際に業務の範疇となる救命医療の現場において,この問題が救命後医療の課題か,パンドラの箱なのか?.いずれにせよ,早急に整理しておく必要があろう.
ここでは,ボストン・グループの言うPTSDの理念が,その生態学モデル註)とともに,常に人と人との絆すなわちミュニティを巻き込んだ問題として定義されることを,救命救急医療におけるPTSDの理論的基盤としたい.〔註:PTSDの生態学(エコロジカル)モデルとは,外傷の影響が個体の各臓器反応,血液,自律神経反応はじめ,身体―心理的影響を与え,さらには家族,コミュニティ,地域,国家などの社会的影響としても拡散する点に注目した観点である.〕個体の症状形成のパラダイムはおおよそ図1に示した通りであり,さらに家族や医療者をも巻き込み,症状形成していく.ピンボール現象(図2,後述)と呼ばれるこうした事実とともに,われわれが救急医療で抱える問題を全く新しい角度から再定義するのが本論の狙いである.
そのうえで,21世紀の救命医療とそのニードに応えられる救命救急センターのあり方についても,議論を試みたい.
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