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講座 リハビリテーション専門職のための法律知識 5
ヘルパーはなぜ吸引してはいけないのか?
Is a use of a suction machine by a domestic helper permitted?
前田 雅英
1
Masahide Maeda
1
1東京都立大学法学部
1Law Department, Tokyo Metropolitan University
キーワード:
ALS患者
,
医(療)行為
,
在宅療養
Keyword:
ALS患者
,
医(療)行為
,
在宅療養
pp.429-434
発行日 2004年5月10日
Published Date 2004/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100577
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はじめに
筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者のたんの吸引については,当該行為が患者の身体に及ぼす危険性にかんがみ,原則として,医師が行うべきものとされてきた.医師法17条は「医師でなければ,医業をしてはならない」と規定しているのである.吸引は,当然のように医行為と考えられてきた.
しかし,困っている要介護者や家族を助ける行為が,なぜへルパーなどにできないのか理解できないというのが,国民大多数の常識であった.しかし,形式的な法をその常識に近づけるため,厚生労働省の検討会(看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会)から,ヘルパーによる吸引行為を条件つきで認める見解が示されたといってよい.
在宅ALS患者にとっては,頻繁にたんの吸引が必要であることから,家族が24時間体制で介護を行っているなど,患者・家族の負担が非常に大きくなっており,その負担の軽減を図ることが強く求められてきたのである.そこで,厚生労働省は,患者家族,看護職員,ヘルパー等の関係者からヒアリングなどを行い,在宅ALS患者の療養生活の質の向上を図るための看護師等の役割,およびALS患者に対するたんの吸引行為の医学的・法律学的整理について,検討したのである.
現時点でもう一度,「医行為」(医療行為)を行いうる主体が限定されていることの法的意味・実質的理由を明らかにすると共に,ALS患者の在宅療養支援のために,たん吸引行為を行う主体を拡げたことの意味を確認しておく必要がある.
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