- 有料閲覧
- 文献概要
今回のテーマは「転倒―予防と対策」であった.脳卒中に次いで,寝たきりの原因の第2位を占めるのは,転倒による「大腿骨頸部骨折」と言われている.また,リハビリテーション医療を受けているクライアントのリスク・ファクターとしても転倒・骨折は予防と対策の点から重要視されている.高齢者の転倒・骨折を予防する取り組みは,厚生労働省も平成12年度から「介護予防事業」の一環としても力を入れている.そこで,この古くて新しい課題に対して,いくつかの観点から問題を提議し,議論した.
1.転倒・骨折の予防と対策
国立療養所中部病院リハビリテーション科
長屋 政博
転倒の発生率に関する報告では,わが国では男女共に約10~20%で,そのうち3~5%に骨折を起こすと報告されている.骨折のなかでも大腿骨頸部骨折では,約1/2は歩行能力が低下し,約20%は寝たきり状態に陥るとされる.高齢者医療において転倒・骨折予防は非常に重要な問題である.高齢者の転倒には,個人の身体機能に伴う要因として,上下肢の筋力低下,歩行速度の低下,日常生活動作能力障害,認知障害などがあり,また生活様式など環境を含めて多くの因子が関与している.したがって,骨折予防対策としては,骨粗鬆症の治療によって骨量を改善すること,転倒防止に外的環境を整えること,運動療法の導入により転倒を予防すること,また転倒を避けることが困難な高齢者に対しては,ヒッププロテクターを導入するなどの総合的な医療が要求されている.そのなかでもリハビリテーションを中心とした運動による転倒予防も重要である.当院では,過去に転倒経験のある高齢者に対し,8週にわたる転倒予防教室を開催している.転倒予防教室の具体的な訓練内容および効果について報告した.運動により身体活動性が向上し,転倒率が減少したり,転倒に対する不安が減少するなどの効果が認められた.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.