Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「カナリア」―カルト教団で洗脳された子どもを誰が救ったか?
二通 諭
1
1石狩市立花川南中学校
pp.405
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100518
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特殊教育は,この4月をもって名称が変更され「特別支援教育」となった.“変化”として共通に認識されていることは,LD,ADHD,高機能自閉症など,通常学級で学ぶ軽度発達障害の子どもたちも教育的支援の対象にするということだ.ところが特別な教育的支援を要する子どもはこの3障害だけにとどまらない.シックスクール,性同一性障害,日本語未習得の外国人子弟,被虐待,不登校,非行常習等々枚挙にいとまがない.
「カナリア」(監督/塩田明彦)の主人公はカルト教団で育った子ども.劇中,教団名こそ変えているものの観客は容易にオームと重ね合わせることができる.子連れ出家のため教団施設内で生活していた光一は無差別テロ事件後,数十名の同じ境遇の子どもたちと関西の児童相談所(児相)に保護される.光一は児相内で最後まで反抗的態度,換言すれば非転向を貫き,単身脱走する.そして,偶然にも同じ児相にいた“出会い系サイト”の少女由希と出会う.光一,由希ともに十二歳.特異な養育環境,愛に恵まれない家庭環境で育った二人は,特別な理解と支援を要する子どもたちだったが,助ける大人はいない.児相も学校も捨てたのだからそれも当然.救われる可能性は,この二人の関係性のうちにしかない.
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