Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
『日本書紀』にみる心的外傷体験―蘇我造媛の病いと死
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.404
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100517
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『日本書紀』(宇治谷孟訳,講談社)の巻第二十五には,中大兄皇子の妻が心的外傷により亡くなったという精神医学的にも注目に値する記載が認められる.
大化の改新で孝徳天皇が即位してから5年目のことである.右大臣の蘇我倉山田麻呂が謀叛を企んでいると讒言する者があった.中大兄皇子がこの讒言を信じたため,天皇が山田麻呂の家に兵を遣わしたところ,山田麻呂は大和の国の山田寺まで逃げ,そこで自らの無実を主張するとともに,末代までの天皇への忠誠を誓って自害した.それにもかかわらず,物部二田造塩は,太刀を抜いて山田麻呂の遺体を刺し,叫び声を挙げてこれを切ったのである.
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