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はじめに
心臓・大血管手術の周術期管理は,医療者側の意識変化,麻酔方法の変遷,さらには心臓リハビリテーションの導入などにより,1990年代には早期抜管,早期離床が積極的に行われるようになった.さらに1990年代終わり頃からは,クリニカルパスの導入により,治療,ケアの標準化が行われ,術後リハビリテーションの概念も定着し,チーム医療の充実のもとに入院期間も短縮されてきた.これと同時期に,心臓手術の低侵襲化も進歩し,とくに冠動脈バイパス術(CABG)の領域では,体外循環を用いない心拍動下冠動脈バイパス術(off-pump coronary artery bypass;OPCAB)が主流となり,これらの症例において術後の入院期間はさらに短縮する方向にある.
一方,手術対象患者における高齢者の割合は増加し,脳血管障害等合併症をもった症例や重度の心不全症例,血液透析施行症例など,いわゆるハイリスク症例も増加の一途にある.
このような状況下,心臓血管外科手術の対象症例は短期間で退院可能な標準的症例と,密度の高い治療を要するハイリスク症例とに二極化する傾向にある.標準的症例におけるデコンディショニングは軽度で,早期離床,リハビリテーション施行などにより術前の運動能力を回復することは比較的容易であるが,術後の合併症等により人工呼吸施行期間が長期化する症例や,術前からの機能低下などにより離床が遅れる症例,とくに高齢者においては基本的ADL(activities of daily living)能力の獲得にも多くの時間を要する場合が多く,早期あるいは術前からの理学療法的アプローチが必要である.
一方,入院期間が短くなった結果,入院中に十分な運動耐容能の改善や,2予防のための教育等を行うことはできず,退院後も継続した回復期,維持期の包括的リハビリテーションの重要性は高まってきている.
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