寄稿・治療体験記
―ニューヨーク大学医療センター・ラスク研究所における脳損傷者通院プログラム―「脳損傷者通院プログラム」における前頭葉障害の補塡戦略(後編)
立神 粧子
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1フェリス女学院大学音楽学部音楽芸術学科
pp.1106-1110
発行日 2006年11月10日
Published Date 2006/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100421
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治療体験記 掲載の趣旨
New York大学の「脳損傷者通院プログラム」(以下,Rusk)には,効果を相互に強化する3要素がある.それは患者への多種類の介入に優先順位と時系列を設定したこと,同種の障害をもつ患者と家族およびスタッフを治療共同体としたこと,集中的な治療段階から機能的応用段階へ移行することを意図した治療的環境を整えたことである.包括的プログラムと称される所以は,特定の知能や行動障害のみに着目した代償的治療を行うのではなく,患者が障害を受容できるように援助し,将来に対する希望の感覚を与え,志気を高め,起きてしまった災難に適応する方法を教え,社会生活を送るうえで必要な判断力を高める訓練などを同時に行うからである.プログラムが効率的に,熱意をもって運営されているのには,Ben-Yishay博士のカリスマ性が大きく作用していると思われる.
本稿は,このプログラムに参加し,Ben-Yishay博士の暖かな指導にじかに接してきた日本人脳損傷者の治療体験記である.戦略編の後編を掲載して,この体験報告をひとまず終了する.「総合リハビリテーション」誌にとって異例の治療体験記の掲載ではあるが,それだけの内容を伴っていると考えている.
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