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I.はじめに
注意障害を前頭葉損傷との関係で考察する場合には,さまざまな問題がある。第1の問題は,"注意の障害"とは臨床的にしばしば使われる用語であり,"everyoneknows what attention is"(James W)であるにもかかわらず,明確な定義がないことである。"注意"は高次精神神経機能のいわば土台のようなものであり,"注意"が障害されると,大なり小なりすべての高次精神神経機能は障害される。情報処理における第1の段階である注意が,すべての精神活動の基盤であり,注意の障害は精神活動のその後のすべての段階に影響することは明らかである(McGhie,1969)。また後述するように,逆に高次精神神経機能(とくに言語)は注意に対して影響を与えており,高次精神神経機能と注意は相互関係をもっている。この点も注意の定義を困難にしている。高次精神神経機能の障害をみた場合,どこまでが"注意"の障害であり,どこからがそうでないのかの明確な境界線は引きえない。また注意の定義の曖昧さに関連して,臨床的に有用で十分な妥当性と信頼性のある注意テストがないことも大きな問題のひとつである。さらに,前頭葉機能に関しては確実な知見に乏しく,なお多くの仮説に留まっているという問題がある。このように"注意"と前頭葉という問題に関しては多くの問題がある。しかし日常の臨床場面で,前頭葉損傷を有する人がなかなか指示にr反応せず,何回も,時には大きな声で,指示を繰り返しようやく反応することや,逆に何かを行なっていても,始終,他のことに簡単に気が散り本来の目的に沿ったまとまったことがなしえないことはしばしば観察されるところである。
本稿ではまず"注意"とは何かについていくつかの見解に触れ,次いで前頭葉症状と"注意の障害"に関して述べ,またいわゆる"注意"に関するテストを前頭葉損傷者,他の脳部位の損傷者,健常対照者に施行した結果を示し,臨床的立場より若干の考察を行ないたい。なお本稿では方向性注意(directed attention)の障害である半側無視については触れない。
The study of disturbance in attention in rela-tion to frontal lobe lesion poses several problems. First, there is no explicit definition of attention. Attention is the basis for higher nervous and mental activities. Disturbance in attention affects all such activities and they in turn control attention. This mutual relationship between atten-tion and higher nervous and mental activities is a great difficulty for formulation of the definition of attention. Second, there is no completely adequate and reliable clinical attention test available. This is associated with the vague definition of attention. The third problem is that a major part of frontal lobe functions remains to be clarified.
The concept of attention differs subtly from one investigator CO another. We propose the following convenient and schematic classification of the aspects and disturbances of attending function into 4 groups:
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