Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「ギミー・ヘブン」―孤立と犯罪と共感覚
二通 諭
1
1石狩市立花川南中学校
pp.909
発行日 2006年9月10日
Published Date 2006/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100385
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「ギミー・ヘブン」(監督/松浦徹)は,共感覚というものを少なくとも本作を観た人には知らしめたという点で意義深い.劇中の専門医が語るには,共感覚の持ち主は十万人に一人とのことだったが,実際はもっといるらしい.高機能自閉症当事者である月文瞭さんは,最近出版された詩画集『自閉症者からの紹介状』(明石書店)のなかで,自身のことを“色に文字が見える”共感覚者であると語っている.共感覚という言葉が喧伝されることで,今後,このようにカミングアウトしていく人が増えていくのではないかと思われる.
インターネットの盗撮サイトで生計を立てている新介(江口洋介)は共感覚(シネスシージア)と診断される.共感覚とは本来なら個別であるはずの視覚,聴覚,嗅覚,味覚,触覚などの感覚が同時に伴って生じる症状のこと.通常なら,音は音,味は味,匂いは匂いとそれぞれ独立した感覚をもっているのだが,共感覚の持ち主は,匂いと音が同時に伴ったり,味覚と触覚が同時に伴ったりするわけだ.いわば脳内の配線が独特であり,一つの感覚が別の感覚を不随意に喚起する状態にある人たちなのだ.
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