巻頭言
高次脳機能障害支援普及事業―相談支援コーディネーターに期待する
生駒 一憲
1
1北海道大学リハビリテーション科
pp.513
発行日 2006年6月10日
Published Date 2006/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100313
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厚生労働省の高次脳機能障害支援モデル事業が2001年度から2005年度まで行われ,今年の3月で終了した.その成果として,高次脳機能障害診断基準,標準的訓練プログラム,標準的社会復帰・生活・介護支援プログラム(案)などがまとめられているが,最大の成果は,相談支援コーディネーターという職種を確立したことである.そして,今年10月からは障害者自立支援法の下,高次脳機能障害支援普及事業が始まる.
高次脳機能障害は診断基準の文言を借りれば,日常生活または社会生活に制約があり,その主たる原因が記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害などの認知障害で,脳の器質的病変が原因となっているものである.交通事故による脳外傷が代表的な原因である.麻痺などの運動障害がなく,会話にも一見これといった問題がないため,後遺症なしとされて社会復帰をしてみたものの,仕事がうまくできない,人付き合いがうまくできない,などのため,結局離職せざるを得ない人々が大勢いるはずである.ここで,大勢いる,と言い切ることができないのは,その実数が不明なためである.このことからだけでも,今まで十分な社会的支援がなされてこなかったことがうかがえる.彼らは社会的に行き場を失っており,早急な対策が望まれる.このような状況下で行われたのがこのモデル事業である.
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