連載 読むことと旅すること 人との出会いに魅せられて・8
ヒースの荒野と『ジェーン・エア』
服部 祥子
pp.932-933
発行日 2010年11月15日
Published Date 2010/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101733
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私が少女の頃,はじめて読んだ本格的な小説はシャーロット・ブロンテの『ジェーン・エア』です。
孤児として冷酷な叔母のもとで子ども時代を過ごしたジェーン・エアは,10歳のとき慈善寄宿学校に送られ,窮屈で非人道的な生活に苦しめられつつもそこで6年間学び,さらに教師として2年間を過ごします。その後18歳で学校を去り,家庭教師として一軒の屋敷に赴きますが,そこでどことなく風変わりで悲劇的な雰囲気をもつ屋敷の主(あるじ)ロチェスターに出会い,心惹かれます。彼もまたジェーンに深い思いを寄せていることを知り,彼女は身分の違いを乗り越えて彼と結婚の約束を交わします。しかし結婚式当日,ロチェスターには狂った妻がいて,屋敷に匿(かくま)われていることが判明し,絶望のなかで彼女は館を去ります。そして行き倒れ寸前のところを牧師一家に救われ,その後宗教的情熱に燃える牧師セント・ジョンにインド伝道のパートナーになってもらいたいと結婚を迫られます。しかし,ロチェスターへの愛を心に抱き続けていた彼女は,かつての屋敷を訪れます。そこで,狂った妻の放った火で館は焼け落ち,妻を助けようとしたロチェスターは建物の下敷きになり,失明して不具者になっていたことを知ります。結局,再会した2人は,深い愛情と信頼のもとに結ばれます。
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