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はじめに
宇宙開発といえば,かつては国家的プロジェクトであった.特に20世紀後半のアメリカと旧ソ連の宇宙開発によって,有人宇宙飛行,人工衛星打ち上げ,月面着陸などが次々と現実のものとなった.これらはまさに国の威信をかけた競争の成果と言えるものであった1).その後アメリカ,ロシア,カナダ,日本,欧州11か国の計15か国により国際宇宙ステーション(International Space Station:ISS)が運用され,現在に至るまで宇宙における研究開発拠点として大きな役割を果たしている(2022年には中国も宇宙ステーション「天宮」を完成させている).
宇宙飛行士の往来は地球から打ち上げるロケットと宇宙飛行士が乗船する有人宇宙機によって行われているが,アメリカ航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration:NASA)はCommercial Crew Program(商業乗員輸送プログラム)として民間企業であるSpaceX社のロケット(Falcon 9),および有人宇宙機(Crew Dragon)での運用を2020年より開始している.また,民間企業単独としてもBlue Origin社やVirgin Galactic社が独自の有人宇宙機により短時間ながら微小重力を体験できる商業的宇宙旅行を実現させている2).
そして今後の月面探査,火星探査などにおいては,官民一体となった国際的プロジェクトとして月周回有人拠点(Gateway)建設,月面基地建設,月面ローバーの開発などが計画されている.また,2030年に運用終了となるISSの後継としての新たな地球低軌道ステーション建設についても複数の民間企業が計画している.このように,現代の宇宙開発は国単独のプロジェクトではなく,国と国,そして国と民間が協力しながら進めていく新たなフェーズに入ったといえる.
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