連載 運動療法に活かすための神経生理(学)・第3回
下肢の運動により痙縮を有する脳性麻痺者の神経生理学的抑制は生じるか?
安部 千秋
1
Senshu ABE
1
1十勝リハビリテーションセンター先進リハビリテーション推進室
pp.1047-1050
発行日 2024年9月15日
Published Date 2024/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551203590
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに—脳性麻痺の痙縮と運動療法
痙縮は上位運動ニューロン症候群の陽性徴候の1つであり,脳性麻痺者の約80〜90%がこの徴候を有している1).痙縮は筋のスティフネスや短縮をもたらし2),転倒のリスクにもつながる3).また,動作そのものの妨げになることも多く,リハビリテーションによる介入が重要となる.
脳性麻痺の痙縮に対する治療として,通常のリハビリテーションでは痙縮筋のストレッチを行うことが多く,そのほかにはボツリヌス療法,髄腔内バクロフェン投与などの薬物療法も用いられている.また,ボツリヌス療法と運動療法の併用も推奨されている4).
特に下肢の痙縮を軽減させる運動療法として,サイクリング運動やトレッドミルトレーニングが挙げられる.脳性麻痺者からこれらの運動後に「身体の力が抜けて動きやすくなった」などの発言が聞かれることも多く,随意運動後に痙縮が軽減していることを臨床的に感じとれる場面は少なくない.このような場面に限らず,リハビリテーションにおいては痙縮の変化を見逃さず,適切に評価することが欠かせない.
本稿では,痙縮のメカニズムと評価の方法を概説するとともに,痙縮を軽減させる運動の1つである下肢のサイクリング運動がもたらす神経生理学的変化について,最新の知見を交えて紹介する.
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.