Close-up 精神疾患における運動の意義を考える
精神疾患患者への運動指導と理学療法士の役割
細井 匠
1
Takumi HOSOI
1
1武蔵野中央病院リハビリテーション科
キーワード:
精神科
,
高齢化
,
転倒
,
施設基準
Keyword:
精神科
,
高齢化
,
転倒
,
施設基準
pp.933-936
発行日 2024年8月15日
Published Date 2024/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551203557
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はじめに
1.精神科病院の現状
本邦の精神科医療は入院治療を中心とした体制から地域移行が進展し,約30年前の1995年と2022年のデータを比較すると入院患者数は341,041人から204,635人に減少し,平均在院日数も468.2日から276.7日に短縮している1,2).
2020年時点での入院患者の疾患別内訳は「統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害」が60.4%を占め,「気分[感情]障害」が11.8%,「血管性及び詳細不明の認知症」が10.7%であり,今後は認知症の割合の増加が予測される.また,年々入院患者の高齢化が進展し,65歳以上の割合は56.4%に達している.年齢別に平均在院日数をみると,15〜34歳は69.3日,35〜64歳は214.9日であるのに対して,65歳以上では497.1日と長く,さらに65歳以上の統合失調症患者に絞ると1,147.7日であり,高齢の精神疾患患者が長期に入院している3).
2.精神疾患患者の体力と運動能力
精神疾患患者は若年時から,認知機能障害や向精神薬の副作用,長期入院などの影響で巧緻性を要する運動や,敏捷性,持久力,バランス能力などの身体機能が同年代の健常者と比べて低下している4,5).加えて患者の高齢化が進んだ結果,この数十年間,精神科で最も多い医療事故は転倒となっており,全国の精神科では少なくとも年間4人に1人が転倒している6).
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