甃のうへ・第71回
日々全力
秋山 綾子
1
1一般社団法人日本ポジティブヘルス協会
pp.1194
発行日 2019年12月15日
Published Date 2019/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201745
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「お兄ちゃん,死んじゃった……」.11年前の8月,突然母からかかってきた電話は今でも忘れません.まったく理解できず,ただ泣きながら兄のもとへ向かっていました.遺体と対面した警察署で受けた説明は,心不全.兄は大きな病気をしたこともなく,人間ドックも受けていたのに,寝たまま次の日の朝,目を覚まさなかったという最期でした.「心臓が止まったら,人は死んでしまうんだ」.心臓と生きることのつながりの強さを痛感した瞬間でした.「どうして兄の心臓は止まってしまったんだろう」,「何かできることはなかったのか?」と,当時大学3年生だった私は,この想いに突き動かされるように,心臓リハビリテーション分野へ進みました.
心臓突然死の予防というと,AEDが最も一般的です.続いて言われるのが,生活習慣の改善です.ですが,個々人がその生活習慣をどうよくすべきか,またその継続が難しいのはご承知のとおりです.私は,高校生の頃にヨガと出会い,以来ずっと続けています.ヨガは体操やエクササイズだと誤解されがちですが,伝統的には「幸せに生きるための実践哲学」がヨガの本質だと言われています.つまり,日常の中から生き方や在り方を大事にすること.普段の生活のなかで意識的に継続しやすいヨガを,心疾患予防に応用し,心機能改善に寄与できないものかと考え,インドや米国でもヨガの学びを深め,大学院ではヨガと心血管機能について研究しました.心疾患患者さんへもリハビリテーションの一環として提供させていただき,「こんなにリラックスしたことはない」,「よく眠れるようになった」など,たくさんの喜びの声を頂戴しました.
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