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はじめに
脳血管障害は,脳血管に生じた異常により虚血や出血を来し,その部位により種々の機能障害を呈する疾患の総称です.長らく日本人の死因の上位を占め,厚生労働省1)の調査では総患者数は117万9000人とされています.寝たきりの原因疾患では第1位です.
脳血管障害の多くは,脳卒中として急激に発症します.一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:TIA)を除く脳卒中は,最重症例では発症後間もなく死亡しますし,軽症例では何の障害も残さず短期間の入院の後に元の生活に戻ることができます.その間を埋める障害の程度はやはりさまざまです.脳は部位によって機能局在があるので,損傷部位や範囲によって運動麻痺や感覚障害,高次脳機能障害といった神経脱落症状が生じます.それらが引き起こす日常生活における種々の不便を最小限にして,いかに充実した生活,ひいては人生を営める状態にするかが回復期リハビリテーションの重要な役割です.その人ごとの生活の再建を図るには,国際生活機能分類(International classification of functioning,disability and health:ICF)を用いて障害を包括的に捉える視点が必要です.
回復期と言うと,急性期よりも時間の流れがゆったりとしていて1人ひとりの対象者にじっくり向き合えるというイメージをもっている人も多いかと思います.これはある意味では正しいですが,ある意味では間違っています.たしかに,対象者とともにする時間は相対的に長いかもしれません.しかし,ゆったりなどしてはいられません.脳卒中では効果的に機能回復を望める期間が限られます.その間に最大限の結果を出さなければなりません(図1)2).また,時期によって回復のメカニズムが異なります(図2)3).その時々に最も適した理学療法を提供するためには,的確な評価と考察に基づいたリアルタイムの障害像把握が不可欠です.また,評価に際しては,ガイドラインなどで推奨される標準的な指標を用いることも大切です.
ここでは,2度目の脳卒中発症という,障害像の理解が少々難しい症例に対する理学療法の介入について考えてみたいと思います.
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