甃のうへ・第62回
こどもを育てるということ
稲員 惠美
1
1静岡県立こども病院診療支援部リハビリテーション室
pp.848
発行日 2018年9月15日
Published Date 2018/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201307
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少子化によりとうとう人口減少が始まりました.そんな時代なのになぜか私のところに通われるこどものお母さんは子だくさんです.兄弟姉妹の赤ちゃんを連れてみえるお母さんについ,「私の分までありがとうございます」なんて冗談交じりに会話が進みます.私はこどもの急性期病院に理学療法士として勤務し31年目になりますが,未婚でこどももいません.ですからお母さん業の本当の大変さは実感しておらず,想像を働かせて歩み寄る努力しかできません.
私が20歳台のころ,患児のお母さんに課題をお願いし,そのほとんどができていないことに「どうして3つか4つぐらいの課題ができないのだろう.昼間この子が1人いるだけなのに」と本気で思っていました.そんなとき,甥が生まれ,新生児発達評価をさせてもらうために毎週末泊まりで通いました.こどもがいる家庭で過ごす機会は貴重な経験となりました.お母さんは毎日何をやっているのだろうか? 私はそこにいると「何もしないまま時間が過ぎた」と感じました.下田昌克著『今日』(福音館書店)にあるように「こどもを育てる」とはそういうことなのだ,そしてそれが毎日,何年も続くと.
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