- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
脳リハビリテーション医の酒向正春です.今,一冊の本が話題になっています.三輪書店から出版された『脳卒中をやっつけろ!』です.著者は日本を代表する脳神経外科医である兵庫医科大学脳神経外科学講座の吉村紳一主任教授です.脳神経外科医,脳卒中医,脳リハビリテーション医,脳卒中患者家族としての立場から興味津々で読ませていただきました.吉村先生の豊富な経験から,脳卒中をやっつける方法が実にわかりやすく凝集されており,脳卒中をまったく知らない方にも簡単に理解できるように説明されています.脳卒中患者にかかわる仕事の方や脳卒中患者を抱える家族の方が脳卒中を知りたいと相談されたときに,まず最初に勧めたい著書です.マンガも取り入れて寝ながらでも学べる内容ですので,皆さんご安心ください.
内容は脳卒中をやっつける方法が五か条で示されています.その一は敵を知ること,すなわち脳卒中について,脳梗塞,くも膜下出血,脳出血の特徴をスムーズに学べます.その二は己を知ること,検査を受けて自分の状態を知ることが勧められ,MRIでの脳組織や脳動脈・頸動脈の検査や,心電図や心エコーによる心臓・不整脈の検査,さらにその他の検査の必要性が学べます.その三は危うきを避けること,そう,危険因子を避けることです.高血圧,糖尿病,脂質異常症,喫煙,大量飲酒,心房細動など,危険因子の避け方が学べます.血圧管理の重要性は言うまでもありませんが,食事療法における飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を考えた戦略,なたね油やオリーブオイルの有効性,お酒の適量についても触れられています.やはり,美味しいものを適度に食べて暮らしたいですね.その四は薬を煎じること.高血圧,脂質異常症,糖尿病,喫煙,抗血小板薬,抗凝固薬薬物治療を受けることの必要性がわかりやすく説明されています.しかし,多剤併用は副作用もありますので,長期的な内服薬の基本は5種類以内が望ましいですね.その五は術を使うこと,まさに吉村先生の主戦場で,手術を検討することの説明です.吉村先生と言えば,超急性期脳梗塞に対する血管内治療・血栓回収療法の世界的トップランナーですが,本著では未破裂脳動脈瘤,脳動静脈奇形,頸動脈狭窄症,頭蓋内動脈狭窄症,もやもや病について説明されています.非常にスマートに説明されており,手術を受けることが怖くなくなりそうです.おわりに,吉村先生のいいお医者さんネットやDR. YOSHIMURA'S WEBSITEの「相談メール」も紹介されています.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.