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—吉村 昭 著—「日本医家伝」
島村 喜久治
1
1国立療養所東京病院
pp.89
発行日 1971年11月1日
Published Date 1971/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204504
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医家は次々に入れ替わるが,医学は永久に亡びない
長い暗い鎖国時代の終わり,長崎に上陸して来たヨーロッパ医学を,漢方医学の先人たちがどのように受けとめ,取り組み,消化してきたか.興味はあっても,かんたんに手にできる資料は少ない.シーボルトや杉田玄白の名は知っているが,はじめて屍体解剖を行なったのは山脇東洋で,蘭学事始で有名な‘解体新書’の真の訳者は前野良沢であったというような知識を,この本ではじめて知って,恥かしさ半分,楽しさ半分という思いであった.
最近,‘医学もの’に積極的に取り組んでいる古村昭氏が,専門の小川鼎三先生らに資料をもらって書き上げた12人の医学列伝というので,史実性については信じるほかに方法がない.描写は,肩がこらないというよりも少し軽すぎる感じもするが,疲れたときなどの軽い読物で,しかもタメになるという近ごろ珍しい本といえるだろう.
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