Japanese
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特集 神経系疾患の診断法
自律紳経の診断的応用とその限界
The Diagnostic Significance and Limit of the Knowledge of the autonomic Nervous System
沖中 重雄
1
,
中村 晴臣
2,3
S. Okinaka
1
,
H. Nakamura
2,3
1東京大学
2国立東京第一病院内科
3東大沖中内科医局
1Faculty of Medicine. Tokyo Univ.
pp.3-19
発行日 1956年1月15日
Published Date 1956/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901480
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Ⅰ.緒言
自律神経は生体活動の所有る面に影響を与え,単に神経性機構のみならず,内分泌腺乃至体液性機構とも不測不離の関係を以つて協同的に作用を及ぼしているものと思われる。又自律神経系自体は一般に交感神経及び副交感神経系の拮抗作用に依って,生体活動を円滑に遂行せしめると考えられているが,決して簡単なる拮抗作用ではなく,極めて複雑な相互関係を有し,むしろ両系統は協調作用を以つて生体に影響を及ぼしていると思われる現象も少くない。従つて自律神経系の一変化のみを以って生体変化の決定的な判定根拠を提示出来ると考える事は不可能である。然しながら或る種の自律神経性変化に於ては,極めて明瞭に生体変化を示すものがあり,臨床的立場に於てその個体の状態を説明し得るものも少くない。而して自律神経の診断的応用にあたっては,之を二つの方向に大別する事が出来る。一つは神経疾患を主とする一般疾病に於て所謂自律神経性反射を検索し,之を以つて其の疾病の診断或いは予後を卜せんとするものであり,他の方向は,所謂自律神経系緊張状態を把握し,之によって生体の自律神経活動の偏倚を理解し,或いは疾患の成立原因や各種症候の説明に資し,更には生体の全活動状況を窺わんとするものである。斯る自律神経性反射及び測定法は極めて多数記載せられて居り,それらの成立機序或いは意義判定に関する意見も極めて種々であり,今後の追究を待たねばならぬ問題が多い。
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