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特集 神経系疾患の診断法
脳波による紳経系疾患の診断
Electroencephalography in Neurological Diagnosis
佐野 圭司
1
Keiji Sano
1
1東京大学脳神経外科
1Dep't of Neurosurgery, Univ. of Tokyo Hospital
pp.21-52
発行日 1956年1月15日
Published Date 1956/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901481
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神経系の疾患の診断にもつとも有力なものは臨牀神経学的検査であり,脳波の検査などは補助診断法の末席をけがすものにすぎないといのが10年ぐらい前までのわが国学者の間の通念であった。これは現在でもある程度まで真理である。まず第一に脳波の発生機序,本態が良く判らない。Jenaの精神科医Hans Bergerが,人間の頭皮あるいは頭蓋から脳の電気活動を誘導描記し得ることを最初に発表(1929年)して以来すでに4半世紀を経ているが,いまだに一般に認められた確固たる脳波の発生理論のあるを知らないのである。それは神経細胞から発するのであるか,neuron回路から出るのであるか,あるいはそれらの集団から織り成されるのであるか,どういう神経化学的変化がその基礎をなしているのか,確実なことは何も判ってはいないのである。したがって脳波の意味づけは殆んどすべてが経験的なものであり,場合によつては揣摩臆測の範囲な出ぬものがある。
第2に脳波は解剖学的変化を教えてくれない。そして解剖学的変化こそ多くの神経学者や"organic-minded"な精神医学者の求めるものである。脳の電気的活動性は脳の機能と密接な関係がある。したがって「機能の腫瘍 tumor of function(Gibbs)」とでも云うべきテンカンの診断には脳波は非常な威力を発揮するが,その他の疾患の診断にとくに脳波が必要不可欠であるという場合はほとんどない。
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