- 文献概要
平成の時代は,1989年1月8日から2019年4月30日まで約30年間続きましたが,この間にリハビリテーション医学,リハビリテーション医療は今までになく大きな発展を遂げました.平成元年当時は43歳であった小生にとっても平成はまさに激動の時代でした.平成元年は,日本リハビリテーション医学会の創設から36年,リハビリテーション科専門医制度開始から9年が経過した年ですが,その頃にリハビリテーション医療を支えていた病院は,国立リハビリテーションセンター,兵庫県,神奈川県など数カ所の県立リハビリテーションセンター,労災病院に加えて,郡部に存在する温泉病院でした.リハビリテーション科専門医は165名であり,PT・OTの国家資格保持者は13,000名しか養成されておらず,当時のリハビリテーション医療は,国民にとってきわめてアクセスしにくい特別な医療サービスであったように思われます.しかし,平成元年に日本リハビリテーション医学会の理事とリハビリテーション医療を提供する全国の病院幹部が協力し,日本のリハビリテーション医療提供体制の確立を目的に,日本リハビリテーション病院協会(現在の日本リハビリテーション病院・施設協会)が設立されたことにより,改革が始まりました.平成3(1991)年の「地域リハビリテーションの定義」,平成5(1993)年の「リハビリテーション専門病院の位置づけ」,平成7(1995)年・平成8(1996)年の「リハビリテーション医療のあり方」,平成11(1999)年には厚生労働省老健局老人保健課との協働で「地域リハビリテーション支援活動マニュアル」などの成果物がまとめられました.これらの活動により「地域リハビリテーション支援体制整備推進事業」が開始され,さらに平成12(2000)年の介護保険制度施行と同期して診療報酬制度に回復期リハビリテーション病棟入院料が創設されました.その後,19年が経過しますが,現在は,急性期〜回復期〜維持期(生活期)のリハビリテーション医療提供体制の基本骨格は確立し,リハビリテーション科専門医は2,500名を超え,PT・OT・STは約30万名と増加するなど,30年前と比較してリハビリテーション医療資源は豊富となり,リハビリテーション医療サービスへのアクセスは飛躍的に良好となりました.一方,障害者福祉の面では,措置制度が支援費制度に変わり,さらに障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改革が進みました.現在,保健・医療・介護・福祉の分野において,わが国がめざす2大施策は「地域医療構想」と「地域包括ケア」となり,これらの実現においてリハビリテーション医学・医療に期待するところはきわめて大きいものがあります.
平成の時代を総括すれば,地域におけるリハビリテーション医療提供体制の基盤整備の時代と考えられ,量的なリハビリテーション医療サービスの拡大路線を進んできたことになります.しかし,現在,リハビリテーション医療の質の問題が大きく浮上するようになりました.他の医療業界からリハビリテーション医療提供機関は玉石混交と揶揄されることもあるようです.令和という新たな時代を迎え,リハビリテーション医療の質の向上という大テーマに,リハビリテーション医学・医療を志す若き医師たちがリーダーとなり,率先して取り組み,成果を積み上げることを切に希望する次第です.
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