- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本書は,理学療法の対象になることが多い「脳卒中」,「人工股関節全置換術」,「人工膝関節全置換術」,「大腿骨頸部・転子部骨折」,「パーキンソン病」,「急性心筋梗塞」,「廃用症候群」を取り上げ,第1章「臨床データから読み解く主要疾患の理学療法」と第2章「疾患別評価集」から構成されている.全体の85%を占める第1章においては,上述の7疾患(症候群含む)ごとに「定義」,「基礎データ」,「評価項目とレビュー」,「臨床データ」,「理学療法関連学会における潮流」の項が設けられている.近年,理学療法に関連する書籍があふれているが,本書は他に類をみない特徴を有している.最も大きな特徴は,東京慈恵会医科大学(慈恵医大)理学療法プロジェクトの一環として附属4病院(本院,葛飾医療センター,第三病院,柏病院)で収集・蓄積された膨大なオリジナルデータがわかりやすく図表で提示されている点である.さらに,蓄積された基礎データおよび臨床データから「言えること」と,「先行研究と照らし合わせて言えること・考えられること」が簡潔に記載されており,エビデンスに基づいた理学療法を強く意識している点も特徴である.
「基礎データ」の項では,発症年齢や性別による特徴,在院日数や転帰,発症から理学療法開始までの期間,危険因子などがわかりやすく解説されており,疾患の全体像が理解できるように工夫されている.「評価項目とレビュー」も評価項目ごとにわかりやすく解説されている.「臨床データ」では,「評価項目とレビュー」の項に記載されている評価(例えば「脳卒中」の節では,National Institutes of Health Stroke Scale (NIHSS),運動麻痺,意識障害,筋緊張,感覚,基本動作能力,座位バランス,立位バランス,歩行自立度,5m歩行テスト,日常生活動作)について,評価項目ごとに1頁を割いて臨床データとその解釈が記載されている.また,必要に応じて経時的なデータ推移も示されている.例えば,「脳卒中」の節に記載されている「運動麻痺」については,発症10日目と退院時の値が示されており予後予測などにも活用できる.他の評価項目も同様に,オリジナルデータの提示とともに丁寧に解説されている.さらに,疾患ごとに記載されている「Dr's Note」においては,疾患の病態や最新の治療動向を理解するうえで役立つワンポイント情報が記載されている点も嬉しい.
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.