書評
—安保雅博(監修)原 寛美,髙橋忠志(編集)—「エビデンスに基づくボツリヌス治療—上肢・下肢痙縮に対するリハビリテーションの最適化のために」
松田 雅弘
1
1順天堂大学
pp.1081
発行日 2022年9月15日
Published Date 2022/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551202794
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
脳卒中に代表される中枢神経疾患発症後の上肢・下肢の痙縮に対するボツリヌス治療の保険適用は2010年10月に承認され,今は痙縮の治療には欠かせない薬剤である.多くのガイドラインやレビューに,ボツリヌス治療による痙縮の軽減,関節可動域の拡大,歩行能力・ADLの改善の報告がみられる.特に,「脳卒中治療ガイドライン2021」には「脳卒中後の上下肢痙縮を軽減させるために,ボツリヌス毒素療法を行うことが勧められる」(グレードA)として紹介されている.しかし,ボツリヌス治療の機序をよく知らずに痙縮の臨床症状に役立つことを理解しているだけでは,医師による痙縮の治療手段としての理解で終わってしまう.
この書籍は,痙縮の病態理解から関節拘縮や痛みのメカニズム,ボツリヌス治療の医学的基礎に加えて,併用されるリハビリテーション技術,理学療法・作業療法,介護負担軽減まで多岐にわたり収載されている.これはボツリヌス治療にあたる医師だけでなく,専門職全員が知っていてほしい知識であるという編集の先生方の意図が明確な書籍である.しかも,今回は医師とセラピストの共同作業という点も注目すべきである.
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.