講座 再生医療—現在と未来・3
神経領域の再生医療の現在と未来
本望 修
1
Osamu Honmou
1
1札幌医科大学医学部附属フロンティア医学研究所神経再生医療学部門
キーワード:
bone marrow(骨髄)
,
regeneration(再生)
,
stem cell(幹細胞)
,
stroke(脳卒中)
,
transplantation(移植)
Keyword:
bone marrow(骨髄)
,
regeneration(再生)
,
stem cell(幹細胞)
,
stroke(脳卒中)
,
transplantation(移植)
pp.881-886
発行日 2016年9月15日
Published Date 2016/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200670
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はじめに
筆者らは1990年代初頭より,各種神経疾患モデル動物に対して各種幹細胞をドナーとした移植実験を繰り返し行ってきている.なかでも脳梗塞に対して,骨髄間葉系幹細胞に有用なドナー細胞として注目し,経静脈的に投与することで著明な治療効果が認められるという基礎研究結果を多数報告してきた.
現在,自己培養骨髄間葉系幹細胞を薬事法下で一般医療化すべく,治験薬として医師主導治験を実施し,医薬品(細胞生物製剤)として実用化することを試みている.2013年2月には治験届を提出し,医師主導治験(第3相)を開始している.数年後を目途に薬事承認を受けることをめざして現在進行中である.治験の詳細は,札幌医科大学(以下,本学)公式ホームページ上の専用ホームページに掲載してある(http://web.sapmed.ac.jp/saisei/index.php).
脳梗塞は,今日においても根本的な治療法は見出されておらず,残存する神経機能障害の回復が極めて困難な疾患の1つである.日本全国で約30万人弱/年が新規に発症する国民病であり,その多くは死亡や重篤な後遺障害が残り,2025年には520万人の要介護者が推定されている.また,糖尿病,高血圧,脂質異常症などを呈する脳梗塞予備軍は1000万人以上にのぼり,高齢化の進む日本では,ますます増加していくことが予測される.脳梗塞による社会的負担は甚大で,年間医療費は約2兆円/年で,社会的損失は約8兆円/年と試算されている.
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