とびら
他人がみえない…
鈴木 明子
1
1北海道衛生部衛生大学設立準備室
pp.257
発行日 1981年2月15日
Published Date 1981/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102343
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級友のデルマに3カ月ぶりに会った.15kgほどやせて顔だけが熟した苺のように赤い湿疹が一杯に出ていた.聞いてみると,「博士論文の指導のための4人の選考委員会が全然組めない.主任教授の名を云うと他の3人が全員辞退してしまった.もう5週間も何もせずに教授間の交渉だけで過したけれど,遂に学部長に直訴状(?)を書いた」とのこと.最優秀の学生が奨学金の期間切れを気にして心因性の湿疹を出しているのを見て,同じ学生の立場から同情以上のものを持った.
米国の大学の研究費は殆どが連邦政府から出ていて,1~2年間ごとに申請し激しい競争によって入手する.研究費は昇進どころかこれを貰えないと職すらも失ってしまうし,現にある有名OT学科は,研究費を大学に持ち込めないために,来年で閉鎖することになっている.こうした実状から研究に強い教授の中には過度の自信から学生や同僚に優越感をふり回し,そのために全くチームワークがとれないことがあり,デルマの教授がそうであった.
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