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脳卒中後の患者に生じやすい精神障害の1つとして,うつ病やアパシー(apathy)がある.アパシーは,1990年にMarinによって意識障害,認知障害,感情障害によらない動機づけの減弱と定義され,意識レベルの低下,認知障害,感情的な悲嘆に起因するものではないとされている1).その後,2006年にLevyとDuboisにより,目的に向けられた随意的で意図的な行動の量的な減少と定義され,次の3型に分類されている2).① 情動感情処理障害によるアパシーは感情と行動の結びつきの変化により,行動を起こし完結させる意欲が減じるか,将来の行動の結果を評価する能力が減少して生じるものである.② 認知処理障害によるアパシーは,目的指向行動を計画し実行するのに必要ないくつかの遂行機能,例えば,企画,作業記憶,ルールをみつけセットを変換することの障害に由来する.③ 自己賦活障害によるアパシーは,自動賦活化過程の障害により自ら発想することや自発的な行動が障害されるが,外的駆動による行動は保たれるものである.アパシーの原因として,前頭前野,基底核,視床といった皮質への経由路の障害による発動性低下が考えられている.
やる気スコアは,複数あるアパシーの評価法のうち,臨床で実施すべき評価法である3).本評価法は,Apathy Scale4)を岡田ら5)が日本語訳したものであり,14項目の質問に対し0〜3の4段階の回答のなかから1つを選択する.日本人に対しては,16点以上を意欲低下とする判定が提案されている5).適応できるのは,適切な回答ができる知的レベルと言語能力を有する患者であることから,高度の意欲低下,中等度の認知症,自分で適切に回答できない患者の場合は別の評価法を選択するべきである3).
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