特集 最新の糖尿病治療と運動療法
糖尿病治療における理学療法士の役割
石黒 友康
1
Tomoyasu Ishiguro
1
1健康科学大学健康科学部理学療法学科
キーワード:
療養指導
,
糖尿病理学療法
,
運動器疾患
Keyword:
療養指導
,
糖尿病理学療法
,
運動器疾患
pp.163-169
発行日 2016年2月15日
Published Date 2016/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200478
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はじめに
2000年日本糖尿病療養指導士認定機構が発足し,第1回認定試験が実施されてからすでに15年が経過した.2015年5月現在,理学療法士の認定者は約1,181名である.療養指導士全体としては数%を占めるにすぎないが,運動療法の専門家として,チーム医療の一員として役割を果たしている.
2015年1月,500名を超える参加者を迎え,第1回糖尿病理学療法学会が大阪で開催された.学会長を務めた井垣1)は基調講演のなかで,日本糖尿病学会認定医が所属する医療施設で,理学療法士が勤務する722施設の理学療法士を対象に調査を行い,回答のあった629施設中62%の施設が,糖尿病診療に理学療法士が関与していないことを明らかにした.しかし逆の見方をすれば,診療報酬の裏付けがないにもかかわらず,約40%の施設で理学療法士が糖尿病診療にかかわっているわけで,もはや,糖尿病療養指導は理学療法士にとって,当然の業務となりつつある.この意味で,糖尿病理学療法の確立が急務であると訴えた.
糖尿病は従来の障害の概念に合致しにくい,さらに診療点数の裏付けがないなどの理由で,他の内部障害疾患に比べ理学療法士のかかわりは決して多くない.しかし,糖尿病の病態や合併症の成り立ちなどを理学療法士の目でよく観察すると,全身疾患としてのさまざまな糖尿病の表情がみえてくる.本稿では,糖尿病治療における「理学療法士の独自性」という観点から,糖尿病治療における理学療法士の新たな展開を提示したい.
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