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これまでの10年
20世紀の日本では,働く人(勤労者)の労働災害,職業病,作業関連疾患の予防と健康増進(以下,産業保健)を専門として研鑽している理学療法士の数は極めて少なかった.本誌32巻10号(1998年)において奈良1)が「産業理学療法」の名称を提唱,産業保健分野における理学療法の発展と専門性の向上をめざし,産業理学療法の特集が組まれた.特集では,宇土ら2)によりわが国における産業保健の進歩,木村3)により勤労者を対象とした健康管理セミナーへの理学療法士のかかわりの実際,梅崎ら4)により企業における腰痛発生因子とその現状,Tucker Carole A. ら5)により労働環境における米国の理学療法が事例とともに紹介された.本誌40巻13号(2006年)では,藤村ら6)が産業保健分野における理学療法士の発展と課題に言及し,産業理学療法のますますの発展を訴えている.本誌47巻(2013年)では3号連続となる講座が企画され,産業保健分野で特に問題となっている腰痛問題とその対策7),2008年から開始された世界にも類をみない特定健康診査・特定保健指導の実際8)および産業保健分野における理学療法士のかかわり9)が紹介された.
日本理学療法士協会では,2010年に認定理学療法士制度を制定した10,11).23の認定理学療法士のうち,「認定理学療法士(健康増進・参加)」の第1回認定必須研修会(2010年11月)では,4コマ中の1コマにテーマ「産業理学療法の実際」が取り入れられ,産業保健分野における理学療法,理学療法士の役割について教授されるようになった.さらに,日本理学療法士協会は2013年6月に日本理学療法士学会ならびにその下部機関となる12の分科学会と5つの部門を設立し,2015年7月には新たに5つの部門を増設した12).産業保健あるいは産業衛生概念における就労者の職業に関連する健康増進と労働災害,職業病などの予防を目的とする学術的・実践的領域を補完するために「産業理学療法部門」が設立され13),2015年7月1日の延べ登録人数は2,265名となっている.
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