特集 理学療法の展望2006
第Ⅱ部 理学療法の発展と課題
産業理学療法の発展と課題
藤村 昌彦
1
,
奈良 勲
2
1広島大学大学院保健学研究科
2神戸学院大学総合リハビリテーション学部
キーワード:
産業保健
,
職業病
,
疾病予防
Keyword:
産業保健
,
職業病
,
疾病予防
pp.1204-1205
発行日 2006年12月1日
Published Date 2006/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100734
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タイトルの「産業理学療法」という用語が,わが国のジャーナルで最初に紹介されたのは,筆者らが調べたかぎりでは,1998年の本誌(理学療法ジャーナル32巻)の特集(産業理学療法)が企画されたときである.当時奈良は,特集の中でアメリカ理学療法協会の専門領域の1つである“occupational health”を紹介し,わが国でも「産業理学療法」を発展させることの必要性を提唱している1).それより,5年前の1993年には日本理学療法士学会(現在の日本理学療法学術大会)の演題分類の1つに「産業・労務管理」が加わり5演題が発表されている経緯からして,この頃にわが国の「産業理学療法」が芽生えたと推察される.
わが国において,産業と医療の関係が法的に整備されたのは,今から30数年前の労働安全衛生法(1972年)である.法整備以前にも,明治初期から産業保健活動は行われており,当時,繊維業に多発した肺結核の予防に寄与している2).その後,産業保健の対象疾病は,(1)致死性疾病から非致死的疾病,(2)急性疾病から慢性疾病,(3)多発疾病から散発疾病,(4)職業性疾病から作業関連疾病・一般疾病へとその関心は推移してきた3).さらに予防医学の進歩とともに,有害環境に対する衛生工学的な対策が進展し,事業所における有害環境への対策が整備された.最近では,産業保健の関心は,作業関連疾患,特に労働作業に由来する筋骨格系の疾患や健康増進・メンタルヘルスにも注目されるようになってきた.
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