特集 慢性期の理学療法—目標設定と治療・介入効果
慢性期の概念と理学療法の役割
岩田 篤
1
,
石倉 隆
2
Atsushi Iwata
1
1大阪保健医療大学保健医療学部リハビリテーション学科
2大阪保健医療大学大学院保健医療学研究科
キーワード:
リハビリテーション機能の細分化
,
慢性期
,
理学療法
,
役割
Keyword:
リハビリテーション機能の細分化
,
慢性期
,
理学療法
,
役割
pp.591-598
発行日 2015年7月15日
Published Date 2015/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200257
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はじめに
医療の効率化を目的として,リハビリテーション医療が急性期・回復期・慢性期と役割的に細分化されて十数年が経過した.2000年に回復期リハビリテーション病棟が新設され,各病期の役割は明確に位置づけられることになったが,現在,あらためて制度設計の見直しが行われている1).その背景には,要介護状態のリスクが高まるとされる75歳以上の人口が,この先10年間で飛躍的に増加(図1,表1)する2〜4)ことに伴う財政的な問題がある.これに対し厚生労働省1)は,よりいっそうの医療の効率化を図るため,急性期を高度急性期と一般急性期に分けるなど,リハビリテーションの機能・役割をさらに細分化する新たな改革案を打ち出している.また慢性期においては,できる限り早期に,円滑に在宅生活へ結びつけ,その後も継続して安定した生活が送れるよう,在宅から徒歩30分圏内での医療・介護・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいる.このように,急性期から慢性期に至るまで,それぞれの機能・役割がよりいっそう明確にされつつある.
しかし,患者の機能回復過程は一様ではなく,その経過が長期化する場合もあることなどから5),慢性期の役割について再考すべき点があると考える.本稿では,慢性期を担当する理学療法士の立場から慢性期の概念を整理したうえで,その多様な役割について,問題点を挙げながら考察したい.
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