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はじめに
理学療法士は年間で1万人程度が輩出され,2014年度現在で約11万人を超えた.理学療法士の増加に伴い職域は拡大し,就労先も医療機関,介護保険サービス,予防事業など多様になってきている.多くの理学療法士は,サラリーマンとして雇用され働いている.就労先を決定する際には勤務場所,勤務形態,理学療法士への要望内容,賃金,教育システムなどを検討する.決定後に雇用契約を結び,これにより労働者(理学療法士)は使用者(雇用主)の具体的な指示(指揮命令)に従い,その報酬として賃金を受け取る雇用関係になる.
指揮命令は勤務先における医療法,個人情報保護法などの法令遵守に関係するもの,練習スケジュール,練習内容,カンファレンス,記録など業務遂行上のルール全般で行われる.ただし,指示が過剰になり労働者の生命,身体,健康が侵されないために使用者の付随義務として安全配慮義務が求められている.専門職種はこのような配慮義務に関する知識に乏しく,人事労務管理での対応に苦慮している.
新入職者への配慮は特に必要である.学生から労働者への移行に伴う急激な環境の変化は,ストレスを発生する.他にも職場には同僚や他職種との人間関係からくる摩擦や軋轢,ハラスメント,患者・家族からのクレームなどの問題が潜んでいる.これらの事象に巻き込まれメンタルヘルスの不調を来し,理学療法に携われなくなる例もある.使用者の安全配慮義務として,メンタルヘルス不調の予防のために,新入職者が問題を克服,解決する過程において管理者や先輩の見守りや援助が必要となる.
本稿では,筆者自身の人事労務管理の経験と管理者向け研修の講師を務めた際に受けた質問等から,新入職者を中心にメンタルヘルス不調を誘発する因子に事例を交え,予防や対策を考えたい.
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