書評
―Tunstall R,Shah N(著)大川 淳,秋田恵一(監訳)―「ポケットチューター―体表からわかる人体解剖学」
菅原 仁
1
1東京工科大学理学療法学科
pp.669
発行日 2014年7月15日
Published Date 2014/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106704
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学生や卒業生から,「もっと解剖学を勉強しておけばよかった」と耳にすることがあります.これは,疾患・障害を目の前に自分の力不足を痛感して思わず飛び出すものであると思います.しかし,専門分野よりも,医学・医療の基礎である解剖であるところが肝です.確かに患者の訴えから身体を触って,その訴えの組織がわからず困ったことは,医療人であれば誰もが一度は経験したことがあると思います.医師は甲状腺疾患を見つけるときに触診をしますが,そのために,甲状腺を触れるようにトレーニングを受けているはずです.触れないようであれば適切な判断ができなくなります.理学療法士や作業療法士においても,人の身体に触って仕事をするので,そもそも触っているものが何であるかわからずに仕事ができないはずです.カラーアトラスを見ていると人体構造を理解したつもりになりますが,皮膚があると途端にその深部にある構造を理解できなくなるものです.
この人体構造の理解のしづらさを解消してくれるのが本書で扱っている体表解剖になります.もう解剖学から新しいことは学ぶことがないとも言われますが,本書を手に取ってみると,その気持ちは変わります.
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