書評
―マリー・ダナヒー,マギー・ニコル,ケイト・デヴィッドソン(編集)/菊池安希子(監訳)/網本 和,大嶋伸雄(訳者代表)―「臨床が変わる! PT・OTのための認知行動療法入門」
松原 貴子
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1日本福祉大学健康科学部リハビリテーション学科
pp.640
発行日 2014年7月15日
Published Date 2014/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106699
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認知行動療法は認知療法に行動療法を融合させ,系統的に構造化された心理学的治療の一つである.20世紀終盤より認知行動療法は学習理論や条件づけに基づく行動療法を取り入れながら,うつ病や不安障害など主に精神心理的問題に対し精神科領域にて発展を遂げてきた.現代医療において,治療概念が生物医学的モデルから生物心理社会的モデルへとパラダイムシフトし,認知行動療法は精神科領域にとどまらず,身体科領域へ広く開放されるようになった.
現在では,慢性疼痛,糖尿病,心血管疾患など幅広い難治性患者に臨床応用されるようになってきている.その理由の一つとして,身体科疾患患者であっても精神心理社会的問題を包含していることで治療に抵抗性を示す場合が多いからであろう.認知行動療法では,患者を局所的なパーツの集合体として取り扱うことはせず,“whole body”(一人の個全体)として包括的に相対する.つまり認知行動療法は,疾患を治療するのではなく,患者(人)とともに考え引導する道筋を探し出すアプローチといえよう.したがって,認知行動療法は治療に難渋する患者を救済する道標になるとともに,治療者にとってもコーピングスキルの幅を広げる貴重なデバイスとなり得る,“知って得する”治療理論・技法である.
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