特集 股関節の運動機能と評価方法
股関節疾患における臨床的評価方法の工夫
森 憲一
1
Kenichi Mori
1
1大阪回生病院
キーワード:
理学療法
,
股関節疾患
,
臨床的評価
Keyword:
理学療法
,
股関節疾患
,
臨床的評価
pp.603-613
発行日 2014年7月15日
Published Date 2014/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106689
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はじめに
股関節疾患に対する日々の臨床において,多くの患者で代償動作が既に学習されている.人工股関節置換術(total hip arthroplasty:THA)など,変形性股関節症の構造を入れ替えた後も,変形に至った過程において代償動作が学習されている.転倒による骨折後の骨接合術や人工骨頭置換術においても,転倒以前の動作に何らかの問題があり,術後も同様の問題が出現する.即ち,関節を入れ替え,骨が接合されても,立位・座位・臥位という日々繰り返される姿勢変化のなかで,術前に学習された代償が常に再生され,歩行に共通する問題が出現している.それらは股関節のみならず体幹や足部へと波及し,複雑な臨床像を呈している.
そのため,既存の検査測定や歩行動作の分析で股関節疾患の股関節のみを評価しても治療の手がかりを得ることは難しい.治療対象となる問題部位を鑑別し,24時間のなかで股関節がどのように使われているか,起居動作を含めた評価を行うことが必要であると考える.
本稿では,特定疾患に限らず股関節疾患における歩行動作の体幹・股関節と足関節の問題を前額面・矢状面にて鑑別する方法と,歩行に共通する起居動作の問題とその評価について述べる.また,多くの問題を呈する腸腰筋と多裂筋における個別的な評価についても紹介する.検査測定や分析のみではなく,そのまま治療に応用できる臨床的評価方法の工夫を解説する.
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