とびら
四十四の瞳へ
丹野 克子
1
1山形県立保健医療大学
pp.369
発行日 2013年5月15日
Published Date 2013/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106271
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壺井栄の『二十四の瞳』は有名作品ですから,読んだという勘違いをしていたのですが,ひょんなことから,ついに昨秋,読みました.若い女先生と学童たちが織りなす心温まる物語と思い込んでいたので,序盤でそれが終わってしまい,焦りました.心温まる物語は,主題へのイントロダクションに過ぎなかったのです.あとに続く,戦前から戦後の時代の人々が受け入れた運命の過酷さや生き抜く強さを,息苦しくなりながら読み終えました.主人公の女先生は,さまざまな人生経験を経て成長していき,その時代に起こった出来事に対する怒りと疑念をもちつつ,子どもたちに対しては,笑顔と涙と,時に配慮ある沈黙の共感をもって受容します.物語には,人々の必死のLife(生命,生活,人生)が描かれていました.
理学療法士が現場で担当する人々も,必死に生きています.私は,理学療法の臨床と,ケアマネジメントや地域包括ケアのフィールドを経て,4年前に教員になりました.そのような私の現場経験が,高齢者とのかかわりが多かったためもありますが,「生きるって大変なことよぉ」と多くの人からうかがいました.保健・医療・福祉・介護の支援が必要な人々からは,生きづらさを抱えた切迫感からくる緊張度の高さを,いつも感じます.
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