特集 心理・精神領域の理学療法
心理・精神領域の理学療法の現状と課題
渡辺 俊之
1
Toshiyuki Watanabe
1
1高崎健康福祉大学健康福祉学部社会福祉学科
pp.97-102
発行日 2013年2月15日
Published Date 2013/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106192
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はじめに
筆者が理学療法士と出会ったのは,身体的リハビリテーション医療スタッフへのコンサルテーション・リエゾン活動においてである.研修医だった時代から数えると,もう30年近く前になる.あのころ,理学療法と精神障害者との接点はほとんど見受けられなかった.当時の精神科医の認識は,理学療法はあくまで身体障害者への治療という位置づけであり,理学療法士も精神科病院に入院する患者にはほとんど関心がなかった.
毎年3万件を超える自殺が社会的問題になっているが,未遂に終わった自殺企図者の多くは,骨折,火傷,切断などに対する身体的リハビリテーションを受けることになる.
筆者が10年前に本論と同様の内容で執筆依頼を受けたとき1)には,理学療法士の対応はこうした自殺企図患者への対応が主であり,彼らは総合病院や大学病院でトレーニングを提供していた.ところが最近では理学療法士を取り巻く状況が変化した.インターネット上で理学療法士を求人している精神科病院を検索したところ1,565件(求人サイトGuppyで検索,2012年12月12日現在)と多い.こうした理学療法士求人増加の背景には,入院患者の高齢化や認知症病棟の併設が影響していると思われる.長期入院している精神科患者には,肥満,廃用,転倒による骨折,糖尿病などの合併も多い.精神科医療においても質の向上のために,患者へのより細やかな身体的ケアが考えられるようになった.こうした患者への理学療法のニーズが急速に高まったのであろう.本稿では心理・精神領域の理学療法の現状と課題について述べる.
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