特集 バランス障害と理学療法
視床の障害によるバランス障害と理学療法
松崎 裕子
1
,
松崎 哲治
1
,
林 克樹
1
Matsuzaki Hiroko
1
1誠愛リハビリテーション病院リハビリテーション部
pp.241-246
発行日 2002年4月15日
Published Date 2002/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106015
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はじめに
脳卒中患者の問題点を考えるうえでバランス障害は重要なウエイトを占める.たとえ患者の運動能力が改善してきても,バランスの問題が残存していれば,起居動作や移動動作などの抗重力活動において逆に転倒の危険性が高くなってしまう.外的環境において無意識のうちに,そしてスムーズに行動をしていくためには目的動作を常に支えていく姿勢制御1,2)が不可欠である.
視床に障害を受けた患者のなかには,運動障害が軽度であるにも関わらず,バランスの問題が残存し活動性が十分発揮できなくなったり,またそのような状態が長く続くことで持続的な筋緊張の異常が起こり,動きに滑らかさを失うものもいる.
本来,姿勢制御には身体位置を制御するために作り出される力や位置と動きを調整するための感覚情報の統合が大切な情報源となる.様々な感覚情報を中継している視床の障害によって引き起こされる問題は,運動という点だけではなく,感覚情報をうまく統合できずに運動のための手がかりにしていけない情報処理過程にもあり,このことが姿勢制御を困難にしていく.そのための手段として,支持基底面を拡大させ,動作のなかでの姿勢制御を代償していくことで運動を定型化させていく.
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