原著
左半側空間無視を呈した1症例に対するリハビリテーションアプローチによるADLへの影響
江口 瑠美
1
,
山内 千鶴
2
,
國島 春子
3
,
佐々木 誠
4,5
Eguchi Rumi
1
1湘南鎌倉総合病院リハビリテーション科
2公立志津川総合病院理学療法室
3宮城野病院リハビリテーション科
4仙台医療技術専門学校理学療法学科
5東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻内部障害学分野
pp.655-661
発行日 2001年9月15日
Published Date 2001/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105883
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はじめに
脳損傷例のリハビリテーションにおいて高次脳機能障害,特に半側空間無視の存在は,車いすのブレーキ操作を忘れる,車いす駆動時無視側をぶつける,着衣の際に無視側の袖を通さない,食事の際に無視側にある食べ物を見落とす,杖歩行や平行棒内歩行時には非無視側方向へ注意が集中してしまうなど,ADLの多様な側面を阻害することが知られている1-4).しかし,半側空間無視のメカニズムについては注意障害説5),表象空間無視説6),半側空間運動低下説7),方向性注意説8)など様々な見解があり定説がない1,9)のが現状である.
また,半側空間無視を呈する患者に対してのアプローチは,言語的能力を手掛かりにしたトレーニングで効果を得たとの報告4)がある一方で,逆に言語活動によってトレーニング効果が得られにくいことを示唆する報告5)もあるため,一概に1つの方法がすべての患者に有効であるとは言い切れない.
そこで,本症例について数多くあるアプローチから左右各大脳半球を個々に刺激することが有効であるか,左右各大脳半球を同時に刺激することが有効であるかを選択理由として,患側上肢他動運動,全身運動(歩行),言語活動を選び出して治療的接近を試み,シングルケースデザイン10,11)にて有効性を比較した.更に,ADL場面においての各アプローチの波及的効果を検討した.
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